管理職になったのに、部下に仕事を任せず、なんでも自分でやってしまいます。どうしたら管理職としての役割が果たせるようになるでしょうか
質問内容
管理職が部下に仕事を任せず、自分で何でもやってしまいます。これでは管理職の役割を果たしていないように思いますが、指導方法がわかりません。
どうしたらいいでしょうか。
回答
この質問について、あなたはどのようにお考えになりますか?
社長からすると、管理職になったのに「管理職になったら仕事を部下に任せるのが管理職の仕事」という、当たり前のことができないのか?と思われているのですね。
「管理職が管理職の役割を果たさない」
このお悩みも、中小企業の社長からよく聞くお話です。
こんなとき「社長がお考えになる管理職の役割とは何でしょうか?」とお聞きしますが、それぞれお答えがまちまちです。
あるいは、明確な答えがないまま、「普通の管理職なら果たして当たり前のこと」と、おっしゃる方もいらっしゃいます。
それでは、順を追って、みていきましょう。
大前提として
先に、大前提としてお伝えしておくことが、あります。
それは、 管理職に推挙する基準が明確になっていることです。
これからお伝えしていく内容は、管理職としての能力が、御社の基準を満たしているからこそ、成り立つことです。
たとえば、問題が一向に改善されない場合は、そもそも管理職に推挙されるにはまだ早かったのかもしれません。
そうしますと、管理職に推挙する基準の明確化とそれを見極める方法を仕組みにすることが必要ですね。
管理職になったのだから、その職務に取り組むだろう、社長が期待して管理職にしたのだから、その期待に応えてくれるだろう、というのは残念ながら難しいようです。
また、辞令が交付されただけでは、管理職になれるものではありません。
やはりそれ相応の教育が必要でしょう。
管理職に推挙する基準については、また別の機会に詳しくお伝えすることにいたします。
言葉の定義を明確にし、解決策を導き出す
社長が考えることと、管理職が考えていることに、食い違いがある場合は、それぞれに言葉の解釈が異なることが多いかもしれません。
まずは、よく使われている言葉の定義を明確にしてから、解決にむけて考えるとうまくいきます。
今回の場合でしたら「管理職としての役割」ですね。
分解して考えてみましょう。
A立場・・・その人がおかれている立ち位置
B職務・・・仕事としてその人が任務として取り組むこと
C役割・・・その人の職務に応じて、期待される働きや行動の仕方
これらの言葉に当てはめて、「管理職の役割を果たしていないように思いますが、指導方法がわかりません。どうしたらいいでしょうか」と、ご質問くださった社長がおっしゃりたいことを考えてみると
「課長(A立場)という立場になったのに、課長としての仕事(B職務)に取り組んだり、課長ならばできて当たり前だろう、こちらが期待している働き(C役割)ができていない」
というようなことでしょう。
こうして日常使っている言葉の定義を明確にすると、問題がはっきりして解決策が考えやすくなります。
問題点をはっきりさせる
次に、問題点を具体的に洗い出しましょう。
問題点として考えられるのは、以下のようなことでしょうか。
問題点
- 課長(あるいはそれ以外の管理職も同様)として、その個人に与えられた職務が明確になっていない
- 課長として期待されている役割が明確になっていない
- 上記2点を本人に伝えていない、あるいは伝えたが本人が理解していない
- 本人は理解しているが職務と役割を果たすスキルが不足している
- 管理職としての意識や姿勢が不足している
今回のご質問の「管理職が部下に仕事を任せない」というのを、上記の問題点に当てはめて考えてみると、以下のように推察できます。
部下に仕事を任せることが管理職の仕事ということをわかっていない。
もしくは、何をどれくらいどのように任せたらいいのか、わかっていない。あるいはそのスキルが不足している。
このように、目に見える問題がおそらくいくつか出てくるでしょう。
解決するには、先に述べた5つの問題として考えられることに沿って、順に解決していく必要があります。
次の項目で、手順をご紹介します。
解決の手順
① 職務を明確にし、文書化・見える化する
「管理職になったらこんな仕事をする」ということを、文書化します。
文書化は、現管理職に担当してもらってください。
社員教育の一環として行えば、一石二鳥です。
管理職の職務を明確にすることで、管理職の意識や姿勢も備わっていきます。
また、管理職を目指す人にも、わかるようにしておくとよいでしょう。
② 管理職ごとに、社長が期待する役割を文書化・見える化する
それぞれの立場の管理職に期待する役割は、社長の手で文書化・見える化するとよいですね。
やはり、社長からの言葉というのは、社員にとってモチベーションにつながるものです。
③ ①、②を伝えて、見極めの場を設ける
管理職にしてから「この人は理解していない」と気づいても遅いので、管理職にする前に、①と②を理解しているかを見極めることが大切です。
そのためには、次のような見極めの場が有効です。
- 管理職登用前研修
- 管理職登用試験
④ 辞令の交付
辞令を交付したら、②の文書とともに、社長本人から、管理職に対して期待していることをしっかり伝えましょう。
「期待していること」は言葉に出して伝えることが大切です。
管理職にしても、何を期待されているのかわからなければ、動きようがないからです。
また「そんなことは聞いていない」という行き違いを防ぐことにも、つながります。
⑤ 管理職研修の実施
やはり管理職になったら、管理職研修を受講してもらうことが必要です。
研修によって、立場が明らかに変わったことを本人に自覚してもらえるからです。
自社に講師を呼んで研修をするのが理想ですが、人数がまとまらない場合は、弊社のような研修会社が実施する公開型の管理職研修を活用なさってください。
⑥ ①~⑤までを、仕組み化する
管理職に登用する際には、①から⑤までを実施することを、仕組み化してしまいましょう。
毎回、行き当たりばったりで行うのではなく、管理職に登用することを検討し始めた日から、一気通貫でスケジューリングします。
そしてその手順は、社員全員に見える化しておくことで「あの人のときは、方法が違った」などと言われずにすみますし
きちんとした手順をふんで、管理職になっていることが、全社員にも伝わっていくはずです。
風通しのよい雰囲気にも、つながっていくでしょう。
まとめ
「管理職が思ったように職務や役割を果たしてくれない」
そんなふうに思ったら、今回の手順を参考に、自社には何が不足しているか見直して、できるところから取り組んでみてください。
一度ですべてが出来上がるものではありませんから、常に改善しながらブラッシュアップです。
少しずつ始めていき、いずれ仕組化することを目指しましょう。
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