看護の現場。主任がその役割を果たせるようになるには?
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「主任」という役割が与えられたばかりの看護師さんの話。
「部下のミスは自分のミス」であることを頭ではわかっていますが、
まだまだ心が理解していない様子。
部下がミスをしたことまで、
自分が謝らなければならないので、
主任になったのがよかったのか悪かったのか・・・という口ぶりです。
あるとき、患者様のご家族の方からお叱りの言葉がありました。
ご家族が、患者様ご本人からベッドで頭をぶつけたということを聞き、
なぜ、家族に報告がないのか、というお叱りの言葉です。
しかし主任は部下からその報告を聞いていませんし、
スタッフは全員そろっていないので、確認できません。
残っているスタッフに聞いたところ、そのような事実はない様子。
主任「今いるスタッフに聞いてみましたが、いまのところそのようなことはないようです。」
家族「じゃあ、親父がうそをついているというのか!!」
と、どんどんご家族の怒りはエスカレート。
「事実確認をしてからお返事します」
と主任は答えましたが、
ご家族は、
「あんたの親父がベッドで頭をぶつけて、そのことを報告してもらえなかったら
どんな気持ちだ!」
とはき捨ててその場を立ち去られたようです。
主任は事実確認ができていない段階で「申し訳ございません」と言いたくない、
という気持ちです。
自分のミスでもないのに責められる、
事実かどうかもわからないのに、申し訳ないとはいえない、
なぜ、家族にあんなふうにいわれなければならないのか、
これからも、こういうことがたくさん続くのだろう。
・・・と心の声。
考えても考えても、どうしたらよかったのか、
主任は答えが出てこないのです。
私も主任と一緒に考えました。
問題を整理しながら。
自分のミスではないけれど、主任になったら、
「部下のミスも上司の私のミス」とわかっていても
すぐにそのことが理解できて、対応ができるものではありません。
主任は主任という肩書きがついたら主任として役割が果たせるわけではなく、
ひとつひとつの経験を踏まえて学び、主任に成長していくということでしょう。
事実確認の前に「申し訳ございません」とは言いたくない気持ち。
もしかすると、こんな心の声があるのではないでしょうか。
「こちらの落ち度かどうかがわからないのに、あやまるのはおかしくないか?」
あるいは
「こちらの落ち度かどうかわからないのに、あやまるなんていやだ!」
医療の現場に限らず「クレーム応対」の研修を行うと、
このようにおっしゃる方は少なくありません。
心から思えないのに、「申し訳ございません」は出てこないのですね。
そういう場合は、こんな言葉に変えてみてはいかがでしょうか。
「すぐに事実確認ができず、申し訳ございません」
「ご心配をおかけして申し訳ございません」
これならば、自分が悪いということではなく
今の状況を引き起こしていることに対して申し訳なく思うという気持ちを
伝えることができそうではありませんか?
もしもその言葉が出せたなら、
「お前の親父が・・」というご家族の言葉を聞くことはなかったかも、と思います。
一緒に考え、最後にそんなことをお伝えしたら、
顔が明るくなりました。
もしも次に同じようなことがあったら、今度はご家族の気持ちになって、
うまく対応ができそう・・・そんな笑顔でした。
パッと笑顔に変わる瞬間。
私はその顔が見たくて、この仕事を続けているのかも・・・
と、いつも思うのです。
「リーダー」というのは、任命されたら勝手に育つのではなく、
こうして一つずつの体験を通して、育っていくものです。
あわせて、自分の体験だけに頼らず、
人の体験を共有したり、事前に必要なスキルを身に着けておくことで
リーダーとして成長し、一人前になることが
少しスピードアップできるでしょう。
教育にはそんな役割があります。
「主任」としての役割を果たし、
リーダーとしての成長の背中を押すための教育
「主任のためのリーダーシップ研修」での一場面です。
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