新入社員から「会社を辞めたい」と相談されたときに先輩ができる「たった1つのこと」
私たちが新入社員だったころのことを、思い返してみましょう。
「もう会社に行くのは嫌だ」とか「つらくてやめたーい!」と思ったこと、誰にでも一度や二度、経験がありますよね。
それを乗り越えてがんばってきたからこそ、その先にある仕事の楽しさや誰かの役に立つ喜びを味わうことができたのだと思います。
しかしその楽しさや喜びは、経験したからこそ、がんばればその先にあるとわかりますが、経験のない新入社員に、この話をしたところで、ピンとくるものではないでしょう。
もしも、新入社員から「会社を辞めたい」と相談されたとき、あなたはどうしたらいいと思いますか?
新入社員から「会社を辞めたい」と相談されたときに先輩ができる「たった1つのこと」
まず、「先輩、私、会社辞めたいんです」と、相談してもらえる先輩は素晴らしいですね。
それくらい先輩のことを信頼しているということでしょう。
その信頼にぜひ答えてあげてほしいのです。
新入社員が「会社辞めたいんです」と相談してきたときに先輩ができるたった一つのこと。
それは、
「親身になって話を聴く」
ということです。
なんだ、そんなことか、それならもうやっているよ、と思われたかもしれません。
しかし、ほかに特効薬があるわけでもなく、これに尽きるのです。
聴き方のコツ
聴き方にはコツがあります。
こうして相談してくるときの新入社員の気持ちはどんなものなのでしょう。
もう絶対に辞める!と思っていたら、おそらく相談してこないはず。
相談するということは、本当は辞めたくないのかもしれません。
あるいは、引き留めてほしいのかもしれないですね。
つまり、「辞めたいくらいの気持ちなんだ」ということを理解して話を聴いてください。
「親身になる」とは、その気持ちを聴くということなのです。
「辞めたいと思うほどの気持ちなんだね・・・。何があったのか、よかったら聞かせてくれますか?」
と、話を聴く気持ちがあることを伝えましょう。
このようにして新入社員が気持ちを話してくれて、先輩が聴くことによって、退職を思いとどまってくれたらそれでよしですし、
あるいは、先輩だからこそできる問題解決の方法があるかもしれません。
「会社を辞めたい」と言われる前にできること
新入社員が「辞めたいんです」と言わなくて済むように、事前に準備しておけることがあります。
それは、新入社員が不安に思ったり、困ったり迷ったりしたときに、「あ!〇〇さんに聞けばいいんだ!」という人を作っておくということです。
え?そんなこと?とお思いですか?
では、ひとつ事例をご紹介しましょう。
この春、大学を卒業して新社会人になった私の娘の話です。
入社から1か月ほどたったある日のこと、娘が電話をかけてきて、次のように切り出してきました。
「おかあさん、会社の人にこんなこと言っていいのかわからないから、確認したいんだけど・・・」
娘は心配性。
ちょっと不安げなこうしたフレーズで始まることは珍しくはないので、今日はなにごとかな?と話を聞いてみました。
娘:
会社から、配属先や配属されてからのことについて、何か不安に思うことや困っていることはありませんか?
って、アンケートが来たんだけど。
今は不安に思っていることや困っていることはないけれど、配属されてから困ったことや不安に思うことが起きたら、どうしたらいいんだろう、誰に聞いたらいいんだろう、って思って。
そういうふうに、アンケートに書いてもいいのかな、と思ってお母さんに聞いてみようと思ったの。
とまあ、こんな感じです。
これをお読みになった社会人の先輩である皆さんは、それはその時に先輩や上司に聞くだけの話じゃないかー!って思われますよね。
確かにそうなのです。その通り、正解です。
いくら心配性の娘でも、そんなことはその通りだとわかっていますが、それでも娘は心配なわけです。
娘のこうした取り越し苦労的な心配は、これまでにも珍しいことではありません。
「それでいいよ」とか「ここはこうしたほうがいいかもね」と言ってあげると、安心して力を出せる我が娘とわかっておりますので、
私は「そんなことは、起きてから考えたらいいんだよ」とは言わず、これまで、娘が安心するような接し方をしてきました。
ですから今回はこんな感じで、電話での会話をすすめました。
私:そうか~。確かに、今は困ったことがなくても、これから先にあるかもしれないものね。
そういう時に、だれに聞いたらいいかわかっているほうが安心だよね。
娘:そうなのよ。だからそういうふうに書いていいのか、そんなこと書いちゃいけないのか、わからなくって。
会社にいるときならいいけど、リモートだともっと困りそうだし……
私:そうだね。会社にいるときなら、周りの人に聞けそうだけど、リモートだと、そういうわけにもいかないものね。
それ、アンケートに書いていいと思うよ。書き方工夫してみたら~?
このように伝え、どんなふうに書くのかは娘が考え、それに対して少しアドバイスをしたところ、娘は「ありがとう!」と納得して電話を切りました。
こうして一見細かすぎるようにみえることでも、不安なことを確認しながら安心に変えて行動してきた娘ですので、私は親として、これでいいと思っています。
このように見守り続けていたところ、不安の確認をする頻度は徐々に減ってきていますし、娘なりに上手に対処できるようになってきたと思うからです。
娘にも、「だんだんうまくなってきているから大丈夫だよ」とも伝えています。
また、それは娘も実感しているようです。
さて、なんだか頼りない娘の話で恐縮ですが、同じように不安に思っている新入社員の方も少なくないのでは?と思い、書いてみました。
娘がお世話になっている会社は、入社前からも、何度となく困っていることや不安なことはありませんか?と聞いては、きめ細やかにフォローしていただいています。
しかし、困ることや不安なことは、おそらくこれから山のように出てくるのでしょう。
それを娘も予想しているだけに、『誰に聞いていいのかわからなかったらどうしたらいいんだろう?』と、不安に思ったわけです。
そんな娘ですが、アンケートには次のように書いたとのこと。
今は不安や困っていることはありませんが、配属されてから困ったことがあったときに、どなたに相談すればいいかが、あらかじめわかっていると、安心して仕事に取り組めると思います。
アンケートに自分の気持ちを書けたことだけでも、おそらく娘は安心したと思います。
先輩社員が思う以上に、新入社員は小さなことで困っている
相談できる先輩がいる人や、困ったことがあったら相談しよう!と思える新入社員は、それほど心配はないでしょうが、
我が娘のように、「こんなこと相談してもいいのだろうか・・」とその段階で悩む人もおそらくいるはず。
ですから、そういう人のためにも、
「あなたが悩んだり困ったことがあった場合は、何でもどんなことでも〇〇さんに聞いてくださいね」
と「担当」を決めておくということです。
先輩が思っているよりも新入社員は小さなことで困っていたり悩んでいたりします。
しかしそんなときに、「〇〇さんに相談すればいいんだ」と思える人がいたら、
そして、自分のことを考えてくれる担当の人だったとしたら、
心強いこと、この上ないでしょう。
相談できる先輩がいて、その先輩が話を聞いてくれたら、嫌なことがあったとしても解消されたり、会社を辞めたいと思ったとしても、思いとどまれることがあるのではないかと思います。
おそらく新入社員をご指導なさる皆さまは、
「不安なことや困ったことは、何でも相談してくれたら、いつでも話を聞くよ!」
と心構えをお持ちでしょう。
しかし「待ち」の姿勢だけでは、うまくいかない新入社員もいるものです。
我が娘のような心配性の人は、まず、「こんなこと、相談していいのだろうか」と考えるものです。
できるだけ、聞き出してあげるような「積極的な関わり方」が重要ということですね。
このように考えれば、新入社員の不安・困りごと・迷っていることをいち早くキャッチして、その心配の種ができるだけ小さいうちに解決する、ちょっとした工夫があるといいですね。
新入社員の不安や困りごとをキャッチするための具体的な流れ
では、具体的な流れを紹介します。
担当者を明確にする
「不安なことや困っていること、迷ったことなどがあったら、どんな小さなことでもいいので、〇〇さんに相談してください」と、新入社員に伝えます。
つまり、誰に話したり聞いたりしたらいいか、担当の人を明確にしておくことです。
これは、できるだけマンツーマンがのぞましいでしょう。
担当者は、できるだけ新入社員に声掛けをする
担当になった先輩は、できるだけ新入社員に声掛けをして、「いつも気にかけているよ」という姿勢を示していきます。
こうして少しずつ信頼関係を作ることで、新入社員は先輩に話しやすくなり、問題は小さなうちに解決できるはずです。
そして新入社員は会社や仕事に慣れ、やがて仕事の楽しさや役に立つ喜びを経験し、仕事を通して成長していけることでしょう。
この取り組みは、新入社員や若手社員を育成する「ブラザー・シスター制度」といいます。
弊社のお客様でも、導入なさっている会社は、離職率の改善などでも大きな成果を上げていらっしゃいます。
しかし最初から制度導入と大きく構えなくても、上記でお伝えしたように、まず「マンツーマンでなんでも話を聞く担当」を決めるだけでも、きっとうまくいきますから、ぜひお試しください。
「五月病」という言葉が昔からあるように、長期の休み明けはちょっと不安になったり会社を辞めたくなったりするもの。
こんな時の「声掛け」は役に立つはずです。
新入社員の方はこれから本格的に仕事を覚えていきます。
この過程で、たくさんの壁にぶつかるでしょう。
自分で乗り越えて成長できるように、困ったことがあったら、あの先輩に聞けばいいんだ!という安心材料をもって取り組めるとしたら、どんなに心強いことかと思います。
それぞれが持ち味を発揮して成長するように、先輩はいつも「心の距離」が近いところにいて、見守ってあげてください。
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